思考の連鎖(CoT)とは
この記事の結論
- 思考の連鎖(CoT)とは、答えだけを求めずに、途中の推論手順を順に書かせてから結論を出させるプロンプトの技法です。
- 2022年1月公開の原論文は、推論過程つきの例を8個見せるだけで、算数の文章題の正答率が大きく上がることを示しました。
- 現在は「考える」機能を内蔵したモデルが増え、手順を細かく指定するより、よく考えるよう促すほうがよい場面もあります。
しこうのれんさ/Chain of Thought
答えを出す前に途中の推論手順を書かせ、多段階の問題の正答率を上げるプロンプトの技法です。
最終更新: 2026-09-26
思考の連鎖(CoT)とは(意味と読み方)
思考の連鎖(CoT)とは、生成AIに最終的な答えだけを求めず、答えに至るまでの途中の推論手順を順に書かせてから結論を出させる技法のことです。読み方は「しこうのれんさ」、英語では Chain of Thought と書き、頭文字から CoT(しーおーてぃー)と呼ばれます。
人が計算問題で途中式を書くと間違いに気づきやすくなるのと似ています。いきなり答えを出すと飛ばされがちな中間の手順を、文章として一つずつ出させるのがこの技法の考え方です。
思考の連鎖の原論文と、その後の発展
名前の由来は、Wei らが2022年1月に公開した論文「Chain-of-Thought Prompting Elicits Reasoning in Large Language Models」です。プロンプトの中に、問題・途中の推論・答えの3点がそろった例をいくつか入れておくと、モデルも同じように途中の推論を書いてから答えるようになります。
論文では、パラメータ数5,400億のモデルに推論過程つきの例を8個示しただけで、算数の文章題を集めたベンチマーク GSM8K で当時の最高水準の正答率に達したと報告されています。同時に、この効果は十分に大きなモデルで現れるものだとも述べられています。
その後、2つの発展が続きました。
- ゼロショットCoT:同じ年の5月に公開された論文「Large Language Models are Zero-Shot Reasoners」は、例を用意せず、問いのあとに「Let's think step by step(一歩ずつ考えよう)」と添えるだけでも効果があると示しました。ある大規模モデルでは、MultiArith の正答率が17.7%から78.7%に、GSM8K では10.4%から40.7%に上がったと報告されています。
- 自己一貫性(Self-Consistency):推論の道筋を複数通り生成させ、最も多く一致した答えを採用する方法です。論文の要旨では、GSM8K で +17.9% の改善が報告されています。
思考の連鎖の具体例:不具合の原因調査
AIコーディングエージェントで原因の分からない不具合を調べてもらう場面を考えます。このテストが落ちる。直して。 だけだと、最初に思いついた修正をそのまま当ててくることがあります。
次のように段階を指定すると、途中の判断を読めるようになります。
- エラーメッセージから、原因の候補を3つ挙げる
- 候補ごとに、確かめる方法を書いて実行する
- 確かめた結果から原因を1つに絞り、その理由を書く
- そのうえで修正し、テストを再実行する
推論と最終回答を <thinking> と <answer> のようなタグで分けて出させると、あとで読み返すときに結論だけを拾いやすくなります。
思考の連鎖についてのよくある誤解
- 誤解:どんな質問でも、段階的に考えさせたほうがよい
実際:原論文が効果を示したのは、算数・常識・記号操作の推論課題です。単純な事実確認でも同じように効くとまでは示していません。出力が長くなる分、待ち時間と料金は増えます。 - 誤解:推論の文章がもっともらしければ、答えも正しい
実際:途中の文章が筋の通ったものに見えても、結論が誤っていることがあります。計算やコードは、実行やテストで確かめます。 - 誤解:いまも手順を細かく書いて指示するのが最善
実際:「考える」機能を内蔵したモデルでは、Anthropic 社の公式ガイドが、手書きの手順より「よく考えて」のような大まかな指示のほうが良い推論になることが多いと書いています。手動のCoTは、その機能を切っているときの代替という位置づけです。
思考の連鎖を使うときのコツ
- 使う場面を選ぶ:条件の多い比較、計算、原因の切り分けなど、途中の手順がある問題で使います。
- 推論に使ったトークンも数えられる:考える機能の推論部分は出力トークンとして料金がかかり、コンテキストウィンドウも消費します。
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出典・参考資料
- Wei ほか「Chain-of-Thought Prompting Elicits Reasoning in Large Language Models」(arXiv, 2022年1月):原論文。推論過程つきの例8個で GSM8K の最高水準に達した報告
- Kojima ほか「Large Language Models are Zero-Shot Reasoners」(arXiv, 2022年5月):「Let's think step by step」を添えるゼロショットCoT
- Wang ほか「Self-Consistency Improves Chain of Thought Reasoning in Language Models」(arXiv, 2022年3月):複数の推論経路から最も一致する答えを選ぶ方法
- 考える機能と手動CoTの使い分け(API 公式ドキュメント):大まかな指示の推奨と、タグで推論と回答を分ける方法
思考の連鎖(CoT)についてよくある質問
Q1. 思考の連鎖(CoT)とは何ですか?
生成AIに答えだけを求めず、途中の推論手順を順に書かせてから結論を出させるプロンプトの技法です。2022年1月に公開された論文で名付けられ、多段階の推論が要る問題で正答率が上がることが示されました。
Q2. 「一歩ずつ考えて」と書くだけで効果はありますか?
効果があったという報告があります。2022年5月の論文は、例を用意せず「Let's think step by step」と添えるだけで、算数の文章題の正答率が大きく上がったと示しました。ただし効き方はモデルや問題の種類で変わるので、自分の用途で比べて確かめます。
Q3. 考える機能が付いたモデルでもCoTの指示は必要ですか?
多くの場合、細かい手順の指定は要りません。考える機能を持つモデルでは、手順を書き込むより「よく考えて」と大まかに促すほうが良い結果になることが多いと公式ガイドは説明しています。機能を切って使うときに、手動のCoTを代わりに使います。