マルチエージェントとは
この記事の結論
- マルチエージェントとは、役割や担当範囲を分けた複数のAIエージェントを組み合わせ、情報を受け渡しながら1つの目標に取り組ませるシステム構成のことです。
- 分ける主な理由は、エージェントごとに別のコンテキストを持たせられること、並行して進められること、担当ごとに指示とツールを絞れることの3つです。
- 1体で済む作業より多くのトークンを使うため、並行して調べる余地が大きい作業に向き、互いの作業が強く依存する作業には向きにくいとされます(2026-09-26 時点)。
まるちえーじぇんと/Multi-Agent
役割や担当範囲を分けた複数のAIエージェントを組み合わせ、情報を受け渡しながら1つの目標に取り組ませるシステム構成のことです。
最終更新: 2026-09-26
マルチエージェントとは(意味と読み方)
マルチエージェントとは、役割や担当範囲を分けた複数のAIエージェントを組み合わせ、情報を受け渡しながら1つの目標に取り組ませるシステム構成のことです。読みは「マルチエージェント」、英語では Multi-Agent または multi-agent system と書きます。
ここでいう「複数」は、同じモデルを何度も呼ぶことではありません。指示・使えるツール・覚えている内容が別々になったAIエージェントが、それぞれの持ち場を受け持つ状態を指します。どのエージェントをどの順番で動かすかという制御の話は、オーケストレーションの項目で扱います。このページは「何体に、どう分けるか」という構成の側に絞ります。
複数のエージェントが会話しながら作業を進める枠組みは、2023年の論文 AutoGen(arXiv:2308.08155)などで研究され、LLM・人の入力・ツールを組み合わせたエージェント同士の対話として整理されています。
マルチエージェントに分ける理由と代表的な形
1体のエージェントにすべてを任せず、あえて分けるのには理由があります。
- コンテキストを分けられる:調べ物で読んだ大量の資料を、各担当が自分のコンテキスト内で要約してから渡せば、全体をまとめる役のコンテキストウィンドウを圧迫しにくくなります。
- 並行して進められる:互いに依存しない調査や作業を同時に走らせられます。
- 担当ごとに絞れる:レビュー役には読み取りのツールだけを渡す、といった権限の分け方ができます。
よく使われる形は次の3つです。
- 司令役と作業役(orchestrator-worker):1体が作業を分けて配り、結果を集めてまとめます。
- 引き継ぎ型(handoff):受付役が内容を見て、専門の担当に会話ごと渡します。
- 作成役と確認役:1体が書き、別の1体が評価して差し戻す往復を繰り返します。
LLM開発企業が公開した調査システムの事例では、司令役が並行して動く下請けのエージェントに調査を割り振る構成で、社内の調査タスクの評価において単一エージェントより90.2%高い成績だったと報告されています(複数エージェントによる調査システムの構築記(開発元の技術記事, 2025-06-13))。
AI開発でのマルチエージェントの具体例
ライブラリの移行作業を例にすると、次のように分けられます。
- 調査担当:
package.jsonと公式の移行ガイドを読み、変更が必要な箇所の一覧を作ります。書き込みの権限は持たせません。 - 実装担当:一覧のうち1項目ずつ受け取り、該当ファイルを書き換えて
npm testを実行します。 - 確認担当:実装担当の差分だけを受け取り、移行ガイドとの食い違いがないかを見ます。実装時の試行錯誤を見ていないので、先入観なく差分を読めます。
担当どうしの受け渡しは、会話の全文ではなく「一覧」「差分」のような短い成果物にします。受け取る側のコンテキストを小さく保てるうえ、人が途中で中身を確かめやすくなるためです。
マルチエージェントについてのよくある誤解
- 誤解:エージェントを増やすほど賢くなる → 実際:担当が増えると受け渡しの回数も増え、要約の段階で情報が抜け落ちることがあります。前述の事例でも、全員が同じ文脈を共有する必要のある作業や、担当どうしの依存が多い作業は、現時点では向いていないと書かれています。
- 誤解:費用はエージェント数に関係なく同じ → 実際:同じ記事では、1体のエージェントでもチャットの約4倍、マルチエージェントでは約15倍のトークンを使うと報告されています。
- 誤解:別のエージェントからの情報は信用してよい → 実際:1体が汚染された資料を読むと、その要約を受け取った担当にも影響が広がります。
マルチエージェントを組むときの注意点
- まず1体で試す:1体で足りない理由(コンテキストが溢れる、並行化したい)が具体的に言えるときだけ分けます。
- 受け渡しの形式を決める:「変更箇所の一覧をこの見出しで」のように、渡す成果物の型を先に決めておくと、抜け漏れを見つけやすくなります。
- エージェント間の通信も攻撃面になる:OWASP のエージェント脅威のまとめでは、エージェント間の通信の汚染や、複数エージェント環境に紛れ込む不正なエージェントが脅威として挙げられています(OWASP:エージェント型AIの脅威と緩和策)。担当ごとに権限を絞っておくと、影響を小さくできます。
関連用語
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出典・参考資料
よくある質問
Q1. マルチエージェントとは何ですか?
役割や担当範囲を分けた複数のAIエージェントを組み合わせ、情報を受け渡しながら1つの目標に取り組ませるシステム構成のことです。各エージェントは別々の指示・ツール・コンテキストを持ちます。
Q2. マルチエージェントとオーケストレーションは何が違いますか?
マルチエージェントは「何体のエージェントに、どう役割を分けるか」という構成を指します。オーケストレーションは「どれを、どの順に動かし、次の一手を誰が決めるか」という制御の仕組みを指します。1体のエージェントとツールだけでもオーケストレーションは必要になります。
Q3. マルチエージェントはどんな作業に向いていますか?
互いに依存しない調べ物を並行して進められる作業や、大量の資料を担当ごとに要約してからまとめたい作業に向いています。全員が同じ文脈を常に共有する必要のある作業は、1体で進めたほうが扱いやすいことがあります。
Q4. マルチエージェントにすると費用は増えますか?
増えるのが一般的です。公開された事例では、マルチエージェントの構成はチャットの約15倍のトークンを使ったと報告されています。分ける前に、1体では足りない理由を確かめておくと無駄を減らせます。