ファインチューニングとRAGの使い分けとは
この記事の結論
- ファインチューニングとRAGの使い分けとは、AIに足りないのが「知識」か「振る舞い」かを見極め、追加学習と検索のどちらで補うかを決める判断です。
- 知識が足りない、古い、社外に出ていない、という問題ならRAG。出力の形式や口調が安定しないという問題ならファインチューニングが先に候補になります。
- 二者択一ではありません。検索で材料を渡し、追加学習で答え方をそろえる併用もよく使われます。どちらも、評価の問題セットを作ってから始めます(2026-09-26 更新)。
ふぁいんちゅーにんぐとらぐのつかいわけ
足りないのが「知識」か「振る舞い」かを見極め、追加学習と検索のどちらで補うかを決める判断です。
最終更新: 2026-09-26
ファインチューニングとRAGの使い分けとは
ファインチューニングとRAGの使い分けとは、AIの答えに不満があるときに、その原因が「材料となる知識の不足」なのか「答え方の不安定さ」なのかを切り分け、打つ手を選ぶ考え方です。
2つの手法の中身はそれぞれの用語ページで扱っています。ファインチューニングはモデルの重みを追加学習で書き換える方法、RAGは重みに手を付けず、質問のたびに検索した資料をプロンプトへ差し込む方法です。このページでは、どちらを選ぶかの判断だけを扱います。
ファインチューニングかRAGかを決める4つの軸
LLMの精度改善に関する公式ガイドは、問題を「モデルが知らない(文脈の不足)」と「モデルの振る舞いがぶれる」の2方向に分け、前者にはRAG、後者にはファインチューニングを当てる整理をしています。これに運用面の軸を足すと、次の表になります。
| 判断の軸 | RAGが向く状況 | ファインチューニングが向く状況 |
|---|---|---|
| 足りないもの | 学習時点にない情報、社内だけの情報 | 決まった書式、分類ラベル、口調の一貫性 |
| 情報の入れ替わり | 週単位・日単位で文書が更新される | ルールがほとんど変わらない |
| 根拠の提示 | 参照した文書名を回答に添えたい | 根拠の表示は求められていない |
| 準備するもの | 検索できる形に整えた文書群 | 入力と模範回答の組を数十件以上 |
迷ったら「その答えは、資料を1枚渡せば人間の新人でも書けるか」を考えます。書けるなら知識の問題なのでRAG、資料があっても書き方が毎回ばらつくなら振る舞いの問題です。
場面別の選び方
- 改訂の多い社内規程に答えるボット:RAG。規程が変わったら文書を差し替えるだけで済み、学習し直す必要がありません。
- 障害報告を決まった5項目の表に整える:まずプロンプトに例を入れるfew-shotで試し、それでも項目が抜けるならファインチューニング。
- 社内ライブラリを使うコードをAIコーディングエージェントに書かせる:APIの仕様はRAGで最新の説明を渡し、命名や書き方の癖はリポジトリ内のルール文書で指示するのが先です。
- 医療・法律など専門分野の質問応答:根拠の提示が欠かせないのでRAGが土台になります。専門用語の扱いが崩れる場合に、併用を検討します。
使い分けでよくある誤解
- 誤解:本格的にやるならファインチューニング、手軽に済ますならRAG
実際:手間の大小ではなく、解く問題の種類で選びます。知識を足す目的では、知識注入を比べた研究(Ovadia ほか, 2023)で、学習中に見た知識でも新しい知識でもRAGのほうが一貫して上回ったと報告されています。 - 誤解:どちらか一方を選ばなければならない
実際:前述の公式ガイドは、両者は積み重ねて使え、互いの弱点を補い合うと説明しています。 - 誤解:プロンプトの工夫は両方を試したあとの話
実際:順番は逆です。同じガイドはプロンプトの調整を出発点に置いています。
ファインチューニングとRAGを併用する形
併用の代表的な形は、「検索で渡された資料を上手に使う」こと自体をファインチューニングで教えるやり方です。RAFT(Zhang ほか, 2024)は、答えに役立たない文書(ディストラクター)を混ぜた状態で学習させ、関係のない文書を無視し、根拠となる箇所をそのまま引用して答えるよう調整する手法です。PubMed、HotpotQA、Gorilla の3つのデータセットで性能の向上が報告されています。
小さく始めるなら、判断の順番は次のとおりです。
- 想定質問と期待する答えの組で評価セットを作る
- プロンプトの指示と例を整えて、どこまで届くかを測る
- 知識の不足が残ればRAG、書き方のぶれが残ればファインチューニングを足す
- 足すたびに同じ評価セットで測り直し、改善しなければ戻す
関連用語
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出典・参考資料
よくある質問
Q1. ファインチューニングとRAGはどう使い分けますか?
AIに足りないのが知識ならRAG、答え方の安定性ならファインチューニングを先に検討します。資料を渡せば新人でも書ける答えかどうかを考えると、どちらの問題かを切り分けやすくなります。
Q2. 最新の社内情報を答えさせたいときはどちらですか?
RAGです。文書を差し替えるだけで次の質問から反映され、回答に参照元を添えることもできます。追加学習で事実を覚えさせる方法は、定着しにくいという研究があります。
Q3. 両方を組み合わせることはできますか?
できます。検索で資料を渡し、追加学習で書式や口調をそろえる形が代表的です。検索結果の中から役立つ部分だけを使うよう学習させるRAFTという手法も提案されています。
Q4. どちらも試す前にやるべきことはありますか?
評価セットを作り、プロンプトの調整だけでどこまで届くかを測ることです。ここで足りない部分が見えてから、RAGかファインチューニングを足すと、効果を数字で比べられます。